あるとき和尚さんは考えました。
和尚さんの食堂は、正式には「喫茶店」でもなく「カレー屋さん」でもなく「参拝の接待所」でございます。ですが、電話で問い合わせしてくれる檀家さんの多くは「お参りに行きたいのですけれど、今日は喫茶店やってますか?」です。和尚さんは「ええ!やっとります!」と軽快に答えています。
和尚さんとしては、興法精舎の食堂のことを、喫茶店だろが、cafeアベであろうが、カレーのアベであろうとも、皆さんの親しみやすい形で知ってもらえるだけで嬉しいのでございます。
来てくれたら、皆さん必ず講堂で手を合わせてくるので、それが一番ありがたいです。食堂で私のことを呼ぶときは「和尚さん」を使ってくれたら嬉しいです。「マスター!」より、しっくりきますね。
和歌山県高野山にある高野山真言宗の総本山は金剛峯寺(こんごうぶじ)と言います。正式には、高野山の「山」全体を「金剛峯寺(こんごうぶじ)」といい、現在建物としてある金剛峯寺は、高野山の中の中心となる寺院の役割を担っているため「金剛峯寺(こんごうぶじ)」と名乗っています。
和尚さんは、親元を離れた十五歳から、10年以上も高野山で修行をすることができたので、高野山での経験は人生の財産となっております。弘法大師さんの開いた修行の地で長いこと居させてもらえたのはありがたいことでございます。
和尚さんのように、高野山真言宗の僧侶が、公的な所用で金剛峯寺へお参りすると、肉や魚を使わない精進料理のお昼ごはんを頂けます。「接待」なので有料ではありません。質素な感じがとてもいいです。
和尚さんは、お食事を頂いたら、おさい銭をしてきますよ。ここまで来させてもらい、食べさせてもくれてありがたい。そう思い、自分が施しできることが最もありがたいことです。これは大事なことです。
高野山には弘法大師の「廟(びょう)」がある奥の院があります。その、奥の院の手前に、頌徳殿(しょうとくでん)という休憩所があります。マハーカーラ・デーワ(大黒天)を祀っています。ここで飲むお茶や、寒い日にお参りした際に立ち寄ると、ほっとします。ありがたい場所です。
和尚さんは、スリランカでも、高野山同様の対応を受けられます。スリランカ上座部派の正式な僧侶なため、キャンディ市にある上座部派の総本山、仏歯寺(ダラダー・マーリガーワ・ビハーラ)では、僧侶専用の食堂で昼食や茶菓子を頂けます。スリランカではカレーです。
高野山で頂く食事と、スリランカで頂く食事は、どちらも「お接待」です。食材や食費というのは、誰かの施しによるものなので、循環しているのです。とてもありがたい気持ちになるのです。こういった経験を踏まえて、和尚さんのお寺、興法精舎でも、高野山とスリランカの寺院と同様に、お接待をしているのです。
最近の和尚さんは、ホットケーキとパンケーキ作りの練習をしています。簡単そうで難しいですね。焦がすこと幾度となくあり、成功したと過信してしまい試作品を提供する時は、また失敗をする。
先日は、親子連れできてくれた常連の方へ、パンケーキを作ったつもりなのに、卵焼きのようになりました。なぜでしょうかね。不思議なほど調理が下手なので、和尚のパンケーキとホットケーキ作りの修行は、まだしばらく続きそうでございます。参拝者の方で、場合によって失敗作となった場合でも受け入れてくれるなら、和尚は作ります。
お釈迦様、お大師さん、尊者たちよ。
ありがたや
【写真】成功した、ふわふわ~パンケーキ