和尚さんは思いました。
【写真】食堂に来客歓迎の植物。「樒(しきみ)」
冬は室内温度が低く、花瓶にそそいだ水の温度が低温で安定するため、祭壇にお供えした花は長持ちします。興法精舎には、祭壇にお供えするための植物として、いつでも「樒(しきみ)」という被子植物を用意しています。お接待処の食堂にも置いています。
真言宗のお寺では、祭壇に使用する花の中でも特に、「樒(しきみ)」を好んで用いています。和尚さんの調べでは、被子植物の「樒(しきみ)」は、西暦700年頃に、奈良の唐招提寺に住まわれた、鑑真和尚が、鑑真和尚の故郷である、唐(現在の中国)より持ってこられた植物だと言われています。
【写真】唐招提寺の鑑真和尚の墓前にて。高野山、奈良、京都。巡礼の旅の記録より。
一般的な言い伝えによりますと、仏花として使用する被子植物の「樒(しきみ)」は、唐の都で咲いていた青蓮華(あおれんげ)に似ていることから、鑑真和尚は、日本へ「樒(しきみ)」を持ってこらたと聞いています。仏や菩薩、亡くなった方にお供えする植物で、蓮華の花が最もふさわしいことに由来するのだと、一般的には伝わっていますが、和尚の調べでは、「樒(しきみ)」を仏教寺院が使用するに至った「真典和尚の仮説」があります。
仏教寺院が「樒(しきみ)」を使用する「真典和尚の仮説」は、インド文化圏の人々にとって、青く、形よく、香りのよい葉っぱを他人に渡す「来賓を迎えるときの歓迎の作法」があるというのが「仮説」の根拠です。
この「仮説」の根拠は、現在のスリランカで知ることができます。スリランカでは、お坊さん、大統領、先生、尊敬する方、聖職者などの大切なお客さん「来賓(らいひん)」を迎える時に、必ず「葉っぱ」を渡すのです。その一例で写真を掲載します。
1枚目の写真は、現スリランカの首相が、満月の法要で、お坊さんに葉っぱの布施をする場面です。2枚目は、学校視察に訪れた首相へ歓迎の葉っぱを渡す小学生の様子。3枚目は僧侶学校付属幼稚園の学芸会に招待された和尚さんと、和尚さんの師匠。
大切なお客さんを歓迎する時に「葉っぱ」を使う習慣は、経過してきた時代や国、人種も異なる様々な尊者達の信仰を通じて、仏教の儀式や、祭壇にお供えする花として、親しまれるようになったと、和尚さんは考えています。特に真言宗においては、真言宗の儀式作法の中で「仏を迎え入れる」意味をもつ作法があります。その時に使うものが、鑑真さんが唐(現在の中国)から持ってきた植物「樒(しきみ)」なのです。
大切なお客さんや、尊敬する方を迎え入れて歓迎する時に「葉っぱ」を渡すスリランカ仏教の習慣と、日本の仏教寺院の祭壇や、真言宗の仏教儀式で使用される「樒(しきみ)」の間には、深い因果関係にあると和尚は考えています。
さて、先月の30日に月忌供養でお供えしたお花。故人や施主の好みに合わせて白色を基調とした仏花をお供えしました。冬は室内植物が長持ちするので、和む時間も長く楽しめます。